vast.ai 機種別の実利益公開
前回の記事では、5台のGPUをvast.aiに貸し出した1か月分の合計収支を公開しました。今回はその続編として、機種ごとの実利益を丸裸にします。いくらで貸して、電気代を引いていくら残り、機体代を何か月で回収できるのか。中古で安く買った3090が実は一番強い、新品で高く買った4000 Adaは苦戦している一方で利益率だけは上位に食い込む、といった機種ごとの明暗をそのまま出します。
- 対象期間: 2026年7月19日〜7月31日(13日間)
- 為替レート: 実効レートで158.76円/USD(算出方法は後述)
- 5台合計の実利益: 約62,294円(13日間、売上約67,867円 − 電気代5,573円)
1. 前提条件
電気代の算出方法
電気代は、各ホストで常時動かしている計測プログラムがCPUとGPUそれぞれの使用ワット数を一定間隔で取得し、そこから積算した電力量(kWh)に電力単価(28.62円/kWh、前回記事と同じ)を掛けて算出しています。ホストごとの内訳もこの仕組みで取れています。
つまりここで出している電気代は、あくまでCPU・GPU本体の消費電力だけを積み上げた金額です。マザーボードやメモリ、ストレージ、ファンなどその他パーツの消費、電源ユニット(PSU)の変換効率(80+ Gold程度で87〜90%前後)は含んでいません。壁コンセント側で実際に消費している電気代は、この記事の数字よりおおむね1.1倍程度高い可能性がある、という前提で見てください。
為替レートの算出方法
vast.aiの出金は週次(木曜)で、実勢レート(出金時点)は次のとおりでした。
| 出金日 | 実勢レート |
|---|---|
| 7/23 | 161.39円 |
| 7/30 | 162.04円 |
| 8/6 | 155.85円 |
今回の対象期間(7/19〜7/31)は、7/23・7/30・8/6の3回の出金週にまたがります。そこでこの3週分を単純平均しました。
(161.39 + 162.04 + 155.85) ÷ 3 = 159.76円
さらに、vast.aiの出金換算は実勢レートより約1円円高に計算される(=受け取り額がその分目減りする)ことが経験的にわかっているので、そこから1円引いた158.76円/USDを実効レートとして使っています。この「実勢よりちょっと不利」は地味ですが、積み重なると無視できない目減りです。しかし、こちらではどうしようもない点でもあります。
earns/dayについて
以下の売上はすべてvast.aiダッシュボードのEarnings(手取り、vast手数料差引済み・ストレージ/帯域課金込み)をそのまま使っています。
2. ホスト別データ
まず、機種ごとの基本条件です。取得価格はいずれも値上がり前の2025〜2026年初に確保したもので、今振り返ると良いタイミングで買えていたと思います。
| ホスト | 新品/中古 | 取得価額(GPU込) | base $/hr | earns/day(手取り) | 稼働状況 | verify |
|---|---|---|---|---|---|---|
| RTX3090-A | 中古 | ¥188,100 | $0.090 | $2.62 | 半年以上継続レンタル | 未verify |
| RTX3090-B | 中古 | ¥93,500 | $0.095 | $2.55 | 月に1〜2日返却も1日以内に再レンタル | verify |
| RTX4000 Ada | 新品 | ¥300,000 | $0.100 | $2.70 | 月に2〜3日返却も1日以内に再レンタル | verify |
| RTX5090 | GPU/電源=新品,他=中古 | ¥500,000 | $0.300 | $7.46 | 月に1〜2日返却も1日以内に再レンタル | verify |
| RTX6000 Blackwell | GPU/電源=新品,他=中古 | ¥1,600,000 | $0.700 | $17.553 | 1か月継続レンタル中 | verify |
ここから13日間の実データで計算した結果が次の表です。
| ホスト | 期間収益(USD) | 期間収益(円) | 電気代(円) | 実利益(円) | 利益率 | 実効$/hr(base差) | 回収期間 | 年ROI |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| RTX3090-A | $34.06 | ¥5,407 | ¥526 | ¥4,882 | 90.3% | $0.1092(+$0.0192, +21.3%) | 16.5ヶ月 | 72.9% |
| RTX3090-B | $33.15 | ¥5,263 | ¥1,040 | ¥4,223 | 80.2% | $0.1063(+$0.0113, +11.8%) | 9.5ヶ月 | 126.8% |
| RTX4000 Ada | $35.10 | ¥5,572 | ¥437 | ¥5,136 | 92.2% | $0.1125(+$0.0125, +12.5%) | 25.0ヶ月 | 48.1% |
| RTX5090 | $96.98 | ¥15,397 | ¥1,810 | ¥13,586 | 88.2% | $0.3108(+$0.0108, +3.6%) | 15.7ヶ月 | 76.3% |
| RTX6000 Blackwell | $228.19 | ¥36,227 | ¥1,760 | ¥34,467 | 95.1% | $0.7314(+$0.0314, +4.5%) | 19.9ヶ月 | 60.5% |
※月換算は「13日間の実利益 ×(30.4÷13)」、年換算は「13日間の実利益 ×(365÷13)」の係数で算出しています。
参考までに、5台合計では13日間の実利益が約62,294円(利益率91.8%)、取得価額合計¥2,681,600に対する回収期間は約18.4ヶ月、年ROIは約65.2%でした。1年間このROIを維持できるなら、投資としては十分成功と言える水準だと思います。しかも高スペックGPUは今後数年で急に値崩れするような性質のものではないので、機種選びを大きく間違えない限り赤字に転落する可能性は低いだろうというのが、今の見立てです。
3. 考察
3-1. 回収期間を支配するのは「稼ぐ力」より「取得価格」
やはり、取得金額の低いRTX3090-Bの回収期間が9.5ヶ月で全機種中最速という結果になりました。稼ぎそのものは$33.15(13日間)と5台中もっとも少ない部類ですが、そもそも中古¥93,500という取得価格の安さが効いていて、ROIで見ると126.8%と唯一の年率100%超えになりました。
逆に、新品30万円で買ったRTX4000 Adaは回収に25.0ヶ月かかる計算です。利益率自体は5台中2位(92.2%)と悪くないのですが、稼ぐ絶対額(13日間で$35.10、5台中最少)に対して取得価格が高いので、回収スピードでは見劣りします。RTX5090・RTX6000 Blackwellのような高単価機ほど有利というわけでもなく、「機種の稼ぐ力」より「その機種をいくらで確保できたか」の方が回収期間を支配している、というのが率直な感想です。
3-2. 電気代込みで見えた、4000 Adaの逆転
RTX4000 AdaはそもそもSFF(Small Form Factor)モデルで、仕様上70W上限に収まる設計です。電気代(13日間で¥437)は5台中もっとも安く、RTX3090-Bのわずか4割程度、RTX5090の1/4以下です。
その結果、稼ぐ絶対額は5台中最少にもかかわらず、利益率では92.2%と5台中2位まで浮上します。回収期間だけを見ると「割高な機種」に見えるRTX4000 Adaですが、電気代を引いた後の取り分の割合で見ると、実は上位に食い込んでいるというのが、電気代込みで計算して初めて見えた逆転劇でした。回収期間と利益率、どちらの指標で機種を評価するかで印象がまったく変わる、という点は今回のいちばんの発見です。
3-3. 実効$/hrがbase価格を超える理由
どの機種も、実際のearns/dayから逆算した実効$/hr(=earns/day ÷ 24)は、設定しているbase $/hrを上回っています。差はRTX3090-Aの+21.3%が最大、RTX5090・RTX6000 Blackwellの+3.6〜4.5%が最小でした。
これは値上げをしたわけではなく、ストレージ課金・帯域課金がGPU本体の貸出料金に上乗せされているためです。ストレージ・帯域の課金額はGPUの単価に関わらずある程度一定額になりやすいので、base価格が低い機種(3090系)ほど、上乗せ分が相対的に大きな押し上げ率として表れています。
3-4. 出金換算の「実勢より1円円高」は地味な目減り
前述のとおり、vast.aiの出金換算は実勢レートよりおよそ1円円高に計算されます。158.76円/USDという実効レートは、単純平均した実勢レート159.76円/USDよりちょうど1円低い数字です。1USDあたり1円なら小さく見えますが、5台合計で13日間の売上が$427.48あることを考えると、それだけで400円強の目減りに相当します。年間で均すとそれなりの金額になるはずなので、頭の片隅には置いておきたいところです。
3-5. 値上げの余地についての所感
RTX3090-Aの「半年以上借りられっぱなし」をはじめ、ほぼ全台が常時レンタル状態にあります。これだけ稼働率が高いということは、単純に考えれば今のbase価格は市場価格に対してまだ低い可能性があります。次のレンタルが切れるタイミングを見つつ、少しずつ値上げを試して、稼働率が落ちない範囲を探ってみたいと考えています。
4. コラム: verifyされる/されない機種があるのはなぜか
上のホスト別データ表を見ると、RTX3090-Aだけが「未verify」のままになっています。これは半年以上ほぼ休みなく貸し出され続けているせいで、vast.ai運営側のハードウェア検証(アイドル時間が必要)が走るタイミングがない、というのが実際に観測できた挙動です。
一方、RTX3090-Bは「稀に返却されても1日以内に再レンタルされる」という、ほぼ同じくらい稼働率の高い機種です。それでもこちらは3〜4か月ほど経ったところで1日だけ返却されるタイミングがあり、そこでverify検査が走って「verify済み」に切り替わったのを実際に確認しました。RTX4000 Ada・RTX5090・RTX6000 Blackwellも同様に、週に半日〜たまに返却されるタイミングでverify化しています。
「借りられっぱなしの方が売上的には嬉しい」はずなのに、verifyという観点では逆に不利に働く、というのはこの2台を見比べて初めて気づいた面白いところでした。
5. 次回予告
電気代まで引いた実利益は今回はっきりしましたが、まだ機体の目減り(減価償却)や税金は反映していません。次回はこの「本当の手残り」を機種別に計算するか、あるいは3-5で触れた値上げ実験の結果を報告するか、どちらかを予定しています。
シリーズ目次
- vast.ai 1か月の収支公開
- vast.ai 機種別の実利益公開(本記事)
- 減価償却を引いたら、本当の利益はいくらか(予定)
- 1か月運用してわかった、稼働率・温度・電気代のブレなど運用の現実(予定)
続きが書けたら、この記事にもリンクを追加します。
コメント機能は現在ご利用いただけません
感想やご指摘は、SNSやContactページからお気軽にどうぞ。



