vast.ai 1か月の収支公開
vast.ai というサービスにGPUを貸し出し始めて、まる1か月が経ちました。今回はその1か月分(2026年7月1日〜7月31日)の実測データだけを使って、売上と電気代、そしてこの段階での手残りを公開します。
- 期間: 2026年7月1日〜7月31日(31日間)
- 売上: $923.17(GPU $849.56 / ストレージ $68.30 / 帯域 $5.31 / リファラル $0.00)
- 電気代: 約13,290円(実測13日分+概算18日分の合計、詳細は後述)
- この段階の手残り: 約134,400円(1USD=160円換算、売上から電気代を引いた額。減価償却は未反映)
先に断っておくと、これは「儲かった」を確定させる記事ではありません。あくまで電気代を引いた段階までの数字です。GPU本体の初期投資をどう回収していくかは、まだこの記事には出てきません。
1. 何をやったか
vast.aiは、GPUを貸したい人(ホスト)と、AIの学習・推論などでGPUを使いたい人(レンター)をマッチングするマーケットプレイスです。自宅で使い切れていないGPUを登録しておくと、借り手がついた時間分だけ料金が発生し、その一部がホストの収益として振り込まれる仕組みになっています。
私は自宅にある5台のGPUをすべて登録し、7月の1か月間、基本的に貸しっぱなしの状態で運用しました。
2. 前提条件
自宅の一室に、5台のGPUを設置して常時稼働させています。構成は次のとおりです。
| GPU | Verification | ホストメモリ | ディスク速度 | ディスク容量 | 信頼性 |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 3090 #1 | Unverified | 128GB | 3044.9 MB/s | 507.0 GB | 99.922% |
| RTX 3090 #2 | Verified | 64GB | 1884.0 MB/s | 640.0 GB | 99.911% |
| RTX 4000 Ada | Verified | 96GB | 5814.7 MB/s | 538.0 GB | 99.87% |
| RTX 5090 | Verified | 128GB | 3304.8 MB/s | 470.0 GB | 99.54% |
| RTX PRO 6000 Blackwell WS | Verified | 196GB | 2917.2 MB/s | 1452.0 GB | 99.54% |
RTX 3090のみ2台構成で、区別のため「#1」「#2」と表記しています。#1は現時点でvast.ai運営側のハードウェア検証が未完了の「Unverified」、他4台は検証済みの「Verified」です。
その他の条件は次のとおりです。
- 電力単価: 28.62円/kWh
- 回線: NURO Biz(vast.aiのベンチマーク実測では、GPUごとに上り400〜810Mbps程度、下り340〜1420Mbps程度)
3. 全体収支
売上の内訳
vast.aiのダッシュボードに表示された、7月1日〜31日の合計はこちらです。
| 項目 | 金額(USD) |
|---|---|
| GPU | $849.56 |
| ストレージ | $68.30 |
| 帯域(アップロード+ダウンロード) | $5.31 |
| リファラル | $0.00 |
| 合計 | $923.17 |
1USD=160円で換算すると、売上は約147,707円になります。
日次の推移
ほとんどの日は1日$30〜32程度で安定していますが、7月6日〜11日の6日間だけ明確に落ち込んでいます(最安値は7月8日の$17.17)。この期間は、5台のうち単価の大きいRTX PRO 6000 Blackwell WSだけが借りられていなかった期間で、その分がそのまま売上の落ち込みに直結しています。逆に言えば、それ以外の25日間はほぼ100%の期間、5台とも途切れずレンタルが継続していたということです。
電気代
電気代は analyze_power.py による実測値がありますが、計測を始めたのが7月19日からだったため、7月1日〜18日分は実測がありません。この記事では、実測できている7月19日〜31日(13日間)の日平均をそのまま7月1日〜18日に当てはめて概算しています。
| 区分 | 期間 | 日数 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 実測 | 7/19〜7/31 | 13日 | 5,573円(約194.6kWh) |
| 概算(実測13日間の日平均を適用) | 7/1〜7/18 | 18日 | 7,717円(約269.4kWh) |
| 合計 | 7/1〜7/31 | 31日 | 約13,290円(約464kWh) |
「借りられている間は常にGPUがフル稼働している」と思い込んでいたのですが、実際には借りているだけで動かしていない時間帯や、動かしていてもGPUを使い切っていない時間帯もあるようです。これは電気代を見て初めて気づいた、正直ちょっと意外なところでした。
参考: 全5台が常に100%稼働していたら
上で見たとおり、借りられていてもGPUが常にフル稼働しているわけではありません。ただ、一番電気代がかさむケース(全5台が31日間ずっとフル稼働)でも黒字を維持できるのか、念のため計算してみました。今回はGPUとCPUそれぞれの製品スペック上の最大消費電力(GPUは定格TDP、CPUはMaximum Turbo Power)を合算し、それを31日間(744時間)ずっと維持したと仮定しています。
| ホスト構成 | GPU最大電力 | CPU最大電力 | 合計 | 31日間の電力量 | 31日間の電気代 |
|---|---|---|---|---|---|
| RTX 3090 #1 + Core i9-10900K | 350W | 250W | 600W | 446.4kWh | 12,776円 |
| RTX 3090 #2 + Core i9-11900 | 350W | 224W | 574W | 427.1kWh | 12,222円 |
| RTX 4000 Ada + Core i5-14400T | 70W | 82W | 152W | 113.1kWh | 3,237円 |
| RTX 5090 + Core i7-13700F | 575W | 219W | 794W | 590.7kWh | 16,907円 |
| RTX PRO 6000 Blackwell WS + EPYC 7V13 | 600W | 240W | 840W | 625.0kWh | 17,886円 |
| 合計 | — | — | — | 約2,202.2kWh | 約63,028円 |
このケースでは、売上147,707円から電気代63,028円を引いた手残りは約84,679円になります。実測ベースの手残り(約134,417円)と比べるとかなり目減りしますが、それでも黒字は残る計算です。
ただしこれはあくまで理論上の上限に近い数字です。実際にはズレる要素が両方向にあります。
- さらに高くなりうる要素: ここではGPU・CPU単体の消費電力しか足していません。マザーボードやメモリ、ストレージ、ファンなどその他パーツの消費や、電源ユニット(PSU)の変換効率(80+ Gold程度で87〜90%前後)を考えると、壁コンセント側で実際に消費する電力はこの合算値よりさらに1割前後高くなる可能性があります。
- むしろ低くなりうる要素: vast.aiで貸し出す用途はGPUに計算負荷が集中し、CPUはデータの受け渡しなど補助的な役割が中心です。CPUがMaximum Turbo Power(表の値)まで張り付き続けることは考えにくく、実際のCPU消費電力はアイドルに近い水準にとどまることが多いはずです。CPU分だけで見ても、この表の値よりかなり下がる可能性が高いです。
両者は逆方向に働くので単純には相殺できませんが、体感としては「CPUがフルには張り付かない」影響の方が大きく、実際の電気代はこの理論値よりも、前述の実測ベースの数字(約13,290円)に近い水準に収まるだろうというのが、今の私の感覚です。
この段階の手残り
売上(円換算)から電気代を引くと、次のようになります。
売上: $923.17 × 160円 = 147,707円
電気代: 約13,290円
手残り: 147,707円 − 13,290円 = 約134,417円
電気代を引いた段階で、はっきり黒字です。ここまでは実測(または実測に近い概算)なので、比較的自信を持って出せる数字です。念のため計算した「GPU・CPUが理論上の最大電力で常にフル稼働していた場合」(前述)でも手残りは約84,679円残るので、最悪のケースを想定しても黒字は維持できそうです。
4. 正直なところ
ここまでの数字だけ見ると景気がいい話に見えますが、これは電気代を引いただけの数字です。GPU本体・電源・その他の初期投資をまだ1円も回収したことにしていません。減価償却を引いた「本当の利益」がいくらになるのか、正直まだ私自身も計算し切れていません。
機種ごとに購入価格も稼ぎ方もかなり違うので、単純に均等償却していいのかも含めて次回検討します。「電気代を引けば黒字。ただし“本当の利益”は減価償却を引くまで分からない」というのが、今の私の率直な立ち位置です。
シリーズ目次
- vast.ai 1か月の収支公開(本記事)
- vast.ai 機種別の実利益公開
- 減価償却を引いたら、本当の利益はいくらか(予定)
- 1か月運用してわかった、稼働率・温度・電気代のブレなど運用の現実(予定)
続きが書けたら、この記事にもリンクを追加します。
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